「忘れられた人類学者
(ジャパノロジスト)」
エンブリー夫妻が見た〈日本の村〉
(田中一彦著、忘羊社、2,200円)
戦時色が次第に濃くなっていた1935年(昭和10年)、熊本県の小さな農村・須恵村(現あさぎり町)にやってきた若い社会人類学者ジョン・F・エンブリー。
農作業から子育て、祭りや宴会、性や近代化まで、意欲的に調査を重ね、戦前の農村生活を驚きと共に記録した。
この著作は戦前唯一の日本農村の研究書として高く評価され、ルース・ベネディクトのベストセラー『菊と刀』(1946年)の参考資料にされたという。
人類学者エンブリーが感動と共に丁寧に取材し、活写した村民の協同活動「かったり」などの精神を改めて問い直す注目の書だと言える。